2015年9月12日

祝バッカス25!レヴュー

燃え尽きて灰になった元指揮者・・・というより、
もはや可憐な一聴衆の立場からこの25回記念コンサートをレビューしてみたいと思います。

去年は家の事情で本番に行けず、2年ぶりのバッカスの演奏会。
就学前児童である息子を連れて行きますが、騒がないようにこの日のために買った仮面ライダー図鑑で何とか黙っていてもらいます。

さて、会場。元コンマスC君と偶然遭遇、会場に入ります。おお!ほぼ満席。さすがの集客力。後ろは埋まっているのでC君と前から3番目という席に陣取りました。
自意識過剰かもしれませんがC君と僕が舞台にかぶりつきで見る・・・嫌がらせにしか見えません。少なくとも僕だったら嫌です。

奏者入場。うむ!4分の一くらいは初めて見る顔。世代は確実に変わっていますね。もちろん古参団員のおなじみの顔も見え少しホッとします。

コンマス紹介、Y氏。まさかY氏のコンマス姿が拝めるとは・・・落ち着き払ったその立ち居振る舞いに思わず笑いが込み上げます。
指揮者は若くて華のある市川さんが入場。なんだか違う団体みたいだ・・・。

そしてミケーリが始まります。
ん!席が前すぎたか?低音が頭の上を通り越し、細かいフレーズで舞台手前と奥の時間差が。結果的には破たんなく、昔ならあきらめたような細かいところ(特にギター)まで丁寧にかっちり弾けていて感心したのだけれど、1曲目から細かい音で始まる曲はちょっと大変かも。でもみずみずしくていい音楽でした。

次のジブリ。これは息子も楽しみにしています。
ここでYASUKOさんがシータの衣装を着て出てきたのですが、僕にはセーラー服に見えた・・・ジブリ映画でセーラー服?しかも赤いリボンをしている・・・もしかしてスケ番刑事2の矢沢雪乃?(ものすごいマニアックだ)ようするに・・・老眼です。

大村編曲、正統派です。各パートのソロとTuttiをうまく組み合わせてメリハリ・濃淡をつけていて飽きさせません。管の使い方がとてもうまく、要所で端正な木管のアンサンブルを聞かせて引き締めます。細かいところまでよく作ってある・・・聴いていて天才じゃないかと思ったカントリーの編曲も大村君だそうで、もはや自分など及びもつきません。

Y氏のソロ、以外にもピッキングの音色がふくよかで美しいです。しばらく見ないうちに成長してる。年齢は関係ないんだね。
2NDのT嬢のソロも堂々と響き渡ってます。

市川さんも曲によって気分を切り変えてきびきびと指揮しています


こういうメドレーは一瞬でも「あー長い」って思われたら最後なのですが(自分の時はモロ長かったです)大村君は有名曲を畳み掛けるように緩急をつけて繰り出すのでまったく飽きませんでした。

2部は小川君の指揮。
なつかしのExtranceです。
やはりこの曲も小川君らしくかっちりと小気味よく進行していきます。欲を言うと前半はもう少しエロく、いや官能的にネッチョリしたかったか。でも後半のデジタルなキレの良さはさすがです。やっぱりいい曲です。若い学生さんたちも、プレリュードシリーズもいいけどちょっとひねって吉水先生のこんな面も味わってもらいたい。
2部から後ろの方に席を取りましたので、バッカスの強みである低音もバランスよく聞こえました。

そして和宮。この曲、ちゃんと聞いたことが無いのですが。始まってしまえば静一ワールド全開。
あの理性の小川君が発狂したかのように荒れ狂い、オケも一番燃えていました。ふっと静かになって、スネアが刻み出し例の「宮さん宮さん」のフルートソロが始まると、仮面ライダー図鑑に見入っていた息子が不意に顔を上げ舞台を注視します。何も知らない子供の心をとらえるくらいこのフルートのメロディは魅力的だったのでしょう。
このあたりから音楽にぐっと惹き込まれます。あとは一気呵成に畳み掛けて爽快に終わりました。

正直ちょっと食い足りない・・・けど、そのあと、バッカナール。

今日の演奏は結構抑え気味です。テンポも音量もぐっと押さえて軽く洒落た感じです。・・・でも最後に豪速アッチェルでしっかりやってくれました。これを狙っていたんですね。

もう少しなにか聞きたい・・・。

そして小川君のカーテンコールの後、アンコール。
実はこの曲が今回のコンサートのすべてを持って行っちゃったんですよね。

珍しい岡崎会長のあいさつの後、カントリーロード。

短い序奏の後、例のメロディ。ドラソロ、いつもながらいい音・・・と思ったらA嬢の手が動いていない。えっ!と見回すと最後列に奇妙に上下する頭が・・・。会長です!この瞬間僕は全身に鳥肌が立ちました。
それは朗々と迷いの無い音でした。どこまでも空に伸びていくような・・・。

これはレアもレア。
創立以来黒子に徹し、決して表舞台に立とうとしない岡崎さんが25年目にして初めてソロを弾いているのです。

会長の実力は誰もが認めるところで、確か10年目に「ナポリ民謡によるマンドラ協奏曲」で、10周年だからソロを弾いてと一晩口説いたけど、自分は音楽面では表に出ないから、とついにそれが実現しなかったという極秘エピソードが頭をよぎります(別に根に持っているわけではありません)

この会場で、このレアさを分かっている人間は何人いたでしょう?

むろん指揮者をはじめ舞台の人間はそれを分かっていてそのあとのTUTTIもすごいものでした。岡崎さんを中心にみんなで寄り添ってオケが一つになって鼓動してました。なんか感謝というか喜びというか、音楽のもつもっとも優しい色があふれ出し、すごく幸せな、すごく貴重な瞬間に立ち会っている気がしたのです!

終わった後も、これはいいものを聞いた。見た。と思って興奮していました。

一番大変な、人のやりたがらない仕事を黙々25年ですから、たまには目立ってもいいと思います。次にソロを弾くのはまた25年後かもしれませんが。

もう宣言しましょう!
ここまで来たんだからあとまた25年続けてください。
そして50周年はサントリーホールか武道館か東京ドームで引退コンサートをやりましょう。(それぐらいたてば何人か金持ちがいるでしょ!)そしてその時20代の団員がいて、「ちょっと!まだまだ辞められたら困りますよ!」なんて言われたら幸せかもしれません。



桝川大輔 
(こちらの記事は、ただ今、育メン修行のため充電中の当楽団古参の指揮者、桝川大輔氏より寄稿頂きました!、ありがとうございます)