2009年8月6日

全国高校マンドリンフェスティバル

コーチしている館林女子高が15年ぶりに全国大会に出場。大阪まで同行してきた。
数多くのプロや名プレイヤーを輩出した全国高校フェスティバル、家内は20年ぶり、僕は初めてである。

7月19日、直接会場入り、1日目の午後の部から演奏を見る。7校しか見れなかったが、この日度肝を抜かれたのは坂野さんの月の記憶をやった静岡の学校と、シェヘラザード4楽章をやった長野の学校。
前者は、坂野さんのこの曲をやるというセンスもさることながら、奏者がノリノリである。リズムが生命にあふれきっていて、かつ音が抜けきって爽快この上なかった。中間部の神秘的な感じもよし。
後者は、とにかくきびきびしたリズム感とスピード・メリハリに驚愕。複雑なリズムの絡み合いの中で、メロディをはっきり聞かせるこだわりが見える。とにかく豪快。僕の好み直球ストライクな曲目・演奏である。 凄腕のコーチと、その期待にこたえるだけの生徒のノリと技量がすばらしい。

ホテルに戻って、自分の高校の練習。父兄の皆さんも呼んで最後の練習。とんでもなくハイレベルな他校の演奏を聴いて、生徒たちの気合も違う。 女子高とは思えない豪快かつ繊細、歌にあふれた会心のプレ2である。 いつになく真剣かつ貴重な時間の後、たこ焼きで打ち上げ。

大阪の夜は、父兄の方や先生たちと一杯なんて思っていたのであるが、あいにくの大雨で僕と家内は近所の喫茶店で深夜までコーヒーを飲みつつ、今日の感想や明日への期待を語る。
翌朝、会場で出番まで直前練習。ここで取って置きのサプライズ。突然の吉水先生の登場である。生徒たちは大好きなプレ2の作曲者に直接指導してもらえるということで大感激。もちろんこれは事前に僕のほうから吉水先生に打診をしていたのであり、当日お忙しい中、わざわざお越しくださったのである。

そして15分程度だったが先生ご自身の指導により、プレ2はさらに生き生きと生まれ変わった。特に何度指導しても歌いきれなかった部分が、吉水先生の指揮で見事に歌えるように・・・。僕としては「いままでなんだったんだよ!」という気がしないでもないが。 それから直前ではあるが、吉水先生の提案で、ある部分で微妙に音楽をとめることに。直前でこれは厳しいかと思ったが、できそうだし、劇的によくなったのでやることに。ほとんどぶっつけだ。がんばれ。

さて、出番。つかみのドラとチェロの冒頭のメロディが、非常に美しく柔らかく出来たのでほっとした。指揮者も奏者も体を動かし、のびのびと全身で歌っている。アレグロではきびきびと鬼気迫るテンポ。マンドリンは咆え、ギターは狂い。重厚なベースはしかし俊敏に斬り込んで来る。百雷が落ちかかるようなユニゾンのストローク。これはたった20数人の音とは思えない。いままで指導してきた歴代の1~4期生たちのかなわなかった想いが、生霊のようにステージに立ち、一緒にかき鳴らしているのであろう・・・。 吉水先生に指導いただいた一瞬止める部分も上手くいった。あっぱれ! 見ているこちらも悔いなく聞き終えることが出来た。

結果は優秀賞!もちろん十分すぎるうれしい受賞である。 演奏後の講評で、F掛先生が指揮者の音楽性とアンサンブルの良さ・迫力をほめてくださったとともに、歌がすばらしいと何度も言って下さった。どんな賞よりもこの言葉がうれしい。

さてこのあと、引き続き他校の演奏を聴く。時間の関係上やはり午後から8校分しか聞けなかった。 その中で言えば、兵庫・広島・奈良の高校の演奏が卓絶していたが、僕にとって今回(といっても15校しか聞いていないが)の中で一番の演奏は兵庫の福崎高校の「イーゴリ公」序曲であった。指揮者がとにかくすばらしいし、奏者も自由な魂でのびのびと演奏している。リズムは野生馬のように剽悍で、音色は色彩にあふれ明るく豊か。歌ごころもたっぷりで、なにより、指揮者を中心に奏者の表情が嬉々としていた。 高校生とか社会人とか関係なくこれは理想の演奏である。

あと2校は特別賞の常連だけあって、うわさどおりの奇跡のような凄演であった。技術もぬきんでており、超有名な高校である。ほかに期待していた高校もあったのだが、時間の関係で聞けず、残念であった。


個人的には、音楽は奏者の自由な魂で、多少ラフでもいきいきと演奏されるのが僕の好みであり、「合奏」というのは、それぞれ違う個性・技量の持ち主が心をひとつに合わせるから「合奏」であり、一人残らず全てを一糸乱れずそろえたらそれは合奏ではなく「マスゲーム」なんじゃないか?などと、そんなことも考えた。
いずれにしろ、高校生たちのすさまじいパワーに圧倒された二日間であった。