本番より早2週間、本番のDVD上映&アンケートを見た。
アンケートではたくさんのお客様からうれしい感想・鋭い指摘・暖かい励ましをいただいた。
やはり音量・迫力の点で物足りなかったのは事実のようだ。これはホールのせいだけではなかろう。もっと音のヌケのよさ、元気さが欲しい。しかしアンサンブルにはいい評価をいただいたようだ。
チューニングはやはり長すぎたかもしれない。ステージングも、アンコール+エンディング+アンコールはさすがに重かったか。しかしこれも賛否両論で、いいという人もかなりいた。しかし今回のアンコールは2曲ともプログラム中の曲を再演奏している。少し芸が無かったかもしれない。
プログラムの曲に関しては本当にそれぞれなのだが、どの曲ももったいないほどの言葉をいただいた。展覧会も編曲のすばらしさを味わっていただけたかと思う。ただ、肯定否定ともにレギュラーオケに比べて○○と言う感想が多いのが気になる。オケよりいいとか悪いとか、余り考えたことが無い。特に展覧会の編曲は、ラヴェル版のイメージとは全然違う。あくまでマンドリンのアンサンブルのための編曲なのである。
たとえば軟式テニスというのがある。競技としての普及度やパワー・スピード面では硬式にかなわないのであろうが、ベコベコの柔らかいボールで緩急自在に変化球を使い分け、見ようによっては硬式よりも面白い物である。絃オケとマンドリンオケにも同じ事がいえないか。と、永遠の論議を蒸し返してもそれこそ詮無いのだが。
DVDを見ているとやはりどうしても自分の指揮を見てしまうのだが、われながら10年位前の馬鹿踊りから比べたらうまくなったと思う。呼吸も感じられる。しかし、まだまだ硬い・・・。本番は楽しみながら振れたのだが、本人が感じている半分も見ているほうに楽しさがまだ伝わってこない。これは奏者も同じこと。これは課題だろう。
昔と比べて、といえば群馬の団友Sさんから1991年の関マンの録音をいただいた。実に16年前に自分が指揮した演奏である。会長をはじめ、バッカスの創立メンバーと始めてであったときの演奏でもある。僕は大学3年、指揮を始めて2回目の演奏会だったが、大胆にも神駒ブロックの片割れの指揮者をつとめていた。
曲は演奏会がクリスマス直前だったので「降誕祭の夜」。聴いてみると、1楽章は最初から走っている。盛り上がってくると拍が全部前に滑っている・・・もちろん指揮者の責任。それなりに勢いはあるが未熟そのものの演奏。2楽章はというと最初に妙な間があるがゆっくりと存分に歌わせてなかなかの演奏。少しほっとした。3楽章は・・・曲の冒頭に勝手にカンパネラソロを入れたりしている。そしてこれも走り気味だが、中間のコラール部分はクサイほど芝居がかってすごく綺麗に歌い上げられている。これは当時師事していたT先生のご指導の賜物であろう。可笑しいのは曲の終了直後にみんなでなにかの笛を吹いて大騒ぎしている。たぶんクリスマスだからであろうが、16年前も今とやっていることはまったく変わっていない。
これをききながら、当時のことを思い出した。一期一会の他大学の奏者、お客さんと、舞台の上で無我夢中に楽しめれば、卒業も就職もどうでもよかった日々(だから今苦労しているのだが)。この演奏会のために、高田馬場の貸衣装やさんに自腹で牧師の衣装を借りに行ったこと。その日の自分は大まじめに舞台と曲席の間に立ち、音楽という祈りを交流させる司祭のつもりだったのであろう。このCDを聞いて、どうやら初心を思い出したような気がする。